2025.4.9

導入事例

新聞記者・エンジニアを経て今は山口在住の現役医学生。異色の経歴を持つスタートアップ起業家が目指す医療現場のDX│アガティカ CEO 藤井 佑機さん インタビュー

  • 株式会社アガティカ 代表取締役社長 CEO / 藤井 佑機(ふじい ゆうき)さん 

    2015年 東京大学を卒業後、日本経済新聞社に入社。経済記者として金融政策やキャッシュレス政策に関する取材を担当。 2019年にマネーフォワード社にエンジニアとして入社。 さらに2022年には山口大学医学部医学科に学士編入し、山口県宇部市に在住。 同年、これまでのキャリアで実感した医療現場のキャッシュレス化の遅れを解決するべく、株式会社アガティカを創業。医療機関向けキャッシュレス決済アプリ「キュアペイ(旧 : 玉円ペイ)」を開発・運営。

StartPassは「日本をスタートアップしやすい国へ。」をビジョンに掲げ、これまで累計1,000社以上のスタートアップ・ファウンダー(起業家)の伴走支援を行ってきました。

そのうちのお一人が、「医療キャッシュレスDX」を推進する株式会社アガティカの代表取締役 藤井 佑機さんです。藤井さんは、日本経済新聞の記者→マネーフォワードのエンジニア→そして山口在住の現役医学生という異色の経歴を持っています。

地方でスタートアップ起業をした藤井さんは1年に渡ってStartPassを活用し、2月にクオンタムリープベンチャーズ(QXLV)および個人投資家複数名を引受先とした資金調達を実施したばかりです。

「金融」「IT」「医療」という全く異なる領域を横断して医療DXに挑戦するその背景と、地方スタートアップのリアル、そしてアガティカが目指しているビジョンについて伺いました。

フィンテックに魅了され、起業の道を意識

―― 本日はどうぞよろしくお願いいたします。
―― まずは藤井さんの異色な経歴についてお話を聞かせてください。

はい。まず新卒で日本経済新聞社(以下 日経)に入社して金融政策やキャッシュレス政策などの取材を任されていました。

その中で、フィンテックやキャッシュレスの領域が面白いなと思うようになりまして。その業界に挑戦してみたいという想いで、2019年にマネーフォワードにエンジニアとして転職しました。

―― エンジニアとしてのキャリアチェンジは大胆な決断です。

スタートアップでプロダクトを作っていく、という仕事自体が面白そうだと思ったのが一番の理由です。

この時幸運だったのは、マネーフォワードの法人向けの会計ソフトを担当できていたことですね。アプリの家計簿の印象が強いですけれど、当時から事業の売り上げを支えていたのはもちろんto Bの事業でした。

会計ソフトの開発を通じ、バックオフィス課題を解決するようなプロダクトは社会から求められる・評価される現実を実感できたのも大変貴重な経験でした。

もし自分が起業するなら、金融系のサービスかつ事業者の課題をDXするようなことをやりたいなという風に考えていました。

―― ここまでの行動力にも驚かされますが、いつ頃から「起業したい」と考えていたのでしょうか。

日経で取材を重ねる中で、SmartDriveの北川さん(編注 : 株式会社スマートドライブ 代表取締役 北川 烈さん)やAlpacaJapanさんとお話しする機会がよくあったんです。

その当時の北川さんは確か大学院を修了されたばかりの時期だったかと記憶しています。当時同年齢くらいの方が画期的な事業をやられているのを見て刺激を受け、起業って面白そうと新卒1年目ながらに思っていました。

―― フィンテック・スタートアップの代表格ともいえるマネーフォワードで得られた刺激も多かったのではないでしょうか。

そうですね。マネーフォワードはやっぱり経営陣も圧倒的に優秀で社員も優秀な方が揃っていて。上場後もスタートアップの色が濃かったので、成長していく企業の風土はこういう感じなのかという印象を強く受けましたね。経営陣との距離もすごく近かったので、辻(庸介)さんや金坂(直哉)さんの話を聞く機会があって、スタートアップの成長を肌身で実感できたのはありますね。結構運が良かったんだと思います。(笑)

医学部に編入。そしてアガティカが考える医療現場のDX

―― その最中で医学部に編入するというのも更に意外に感じます。

これもよく聞かれるんですが、もともと私の父親が難聴だったこともあり医療福祉の分野に興味がありました。記者の頃に医療の記事を担当することもあり、以前から医療の道も選択肢の一つとして考えていました。

マネーフォワードに一年弱在籍して30歳が近づいて、挑戦するならこれが最後かなと思って編入試験を受けて30歳で入学しました。

ただ、これまで話した通り自分の事業をやりたいという気持ちもずっとあったので、医学生として学びながらフィンテックの事業にも取り組めたらと考えていました。医療現場のキャッシュレス化が遅れているという社会課題ももちろん知っていたので、アガティカを創業したという形ですね。

―― ぜひ、アガティカの事業、そしてキュアペイについても詳しく教えてください。

はい。医療機関・病院・クリニック向けのキャッシュレス決済アプリ「キュアペイ」を開発しています。「キュアペイ」は、簡単な操作でQRコード決済を可能にし、さらに、基本決済手数料0%(月決済額8万円まで)で導入コストを抑え、医療機関の負担を軽減するというサービスを提供しています。

https://cuarep

画像

―― アガティカが解決する課題について教えてください。

医療機関は特にDX化が遅れている現場と言われるんですが、ユーザーの裾野がすごく広いのにDX化が遅れているという現状をなんとかしたいという思いがありました。

現状はキャッシュレス機能のみですが、今後は病院の検索や予約、事前問診の機能など、患者さんと医療機関を繋げる機能を拡充し医療の効率化を実現できるプロダクトにしたいなと考えています。

―― 医療のDXに取り組むスタートアップも多い中、BtoBtoCまで広げて考えているところにマネーフォワードでの影響も感じます。

そうですね。 toBとtoCの二本立てでやっていて、企業からもエンドユーザーからも認知を獲得していたという経験があって双方の課題解決をやりたいと思うようになりましたね。

―― 藤井さんから見てなぜ医療現場はキャッシュレス化が遅れているとお考えでしょうか。

様々な理由がありますが、その一つに保険診療はキャッシュフローが良くない点があります。例えば、いただく料金は自分たちの意思では変更できないので、物価高で医療機器が高騰しても値上げできないですとか。

さらに、一般的に3割が窓口負担で残りの7割が診療報酬という形で後日に入金されて、それが2か月遅れとかになるんですよね。すぐ受け取れる3割の売上の中で、決済手数料が差し引かれたり入金が遅くなったりするのは、資金繰りを圧迫するんですよね。

―― なるほど。キュアペイの強みでもある決済手数料がここで活きるんですね。

はい。一定の金額までは決済手数料0%で導入可能で初期費用もいただいていないので。60代・70代の方でもQR決済を使いこなせるという報道にあるように、今後は80代でもキャッシュレスの方が良いという人は増えていくだろうと思っています。ですので、手軽にキャッシュレスをお試しいただける環境を作りたかったという背景があります。

地方スタートアップにとってのStartPass

―― 2024年からStartPassをご利用いただいていますが、ご導入の背景について教えてください。

マネーフォワードにいたとはいえ、やはり自分で経営するのも資金調達するのも当然初めてでした。そのあたりをサポートしてくれるところがあったらいいなと思っていて、SNSでStartPassの口コミを見かけて使ってみようかなと思いました。

(当時 藤井さんが見かけた口コミ↓)

―― 実際にどのように活用されていましたか。

毎月 StartPassの濱田さんに壁打ちのミーティングを設定いただいて、毎月の進捗状況を共有していました。その時に棚卸した課題をもとに、StartPassからコンタクトできる有識者であったりサービスであったりをご紹介いただくという流れでした。

StartPassでは月額10,000円のプランのほかに、年間500社との壁打ちに応えるエキスパートと毎月経営課題の棚卸しを行うプランのご用意もございます。

僕たちのような地方スタートアップだと、圧倒的に人的ネットワークが不足していると常日頃感じます。東京だったらなんとかなるかもしれないんですが、地方だと難しかっただろうなという印象があるので凄い助かりましたね。多分それがなかったら資金調達まで至っていないんじゃないかと思います。

―― 地方スタートアップならではの課題についても教えてください。

普段からリモートワーク中心なので営業も投資面談も課題ですね。
投資検討の面談も初回はリモートでも2回目、3回目はリアルで会いたいという場合が多くて。さらに僕の場合は学生でもあるので、スケジュールの兼ね合いもすごく難しいです。

あと、スタートアップ同士のコミュニティですね。宇部市にもスタートアップ向けの施設はあって大変ありがたいんですが、東京の豊富なリソースに比べるとどうしてもという点があるので、StartPassさんを通じて出会えることで補えていたかなという所ですね。

藤井さんはStartPassを通じて、アガティカ社に適したスタートアップ営業の有識者への相談やIVS 2024への参加、債権回収システムの導入などを行いました。

資金調達の道のり

―― 今回の資金調達までの道のりについてもお聞きしたいです。

資金調達活動を開始した初期に、四ツ谷で(現在は渋谷)開催されているStartupNightに参加し、リアルに投資家と一気に会える場があったのはありがたかったです。遠方なので頻繁には行けないですが、行けば一度で多くの投資家・起業家と接点を持てるのは貴重でした。

ただ、弊社の事業の性質上、実績やトラクションが十分でない状態では、投資家からの信頼を得るのが非常に難しかったです。医療キャッシュレスという難しい領域を本当に実現できるのかという点に確信を持ってもらうのが難しくて。プロダクトのリリース前は結構厳しかったなと思います。

―― 11月の正式リリース後に好転したということですね。

はい。今回投資いただいたクオンタムリープベンチャーズの古谷(健太郎)さんと面談したのもリリース後の12月だったので、すでに導入実績が複数できていた状態でした。

―― ほかにも投資が決まった要因があれば知りたいです。

初回の面談から代表パートナーである古谷さんとお話しできていたこともそうですが、ビジネスモデルやミッションに共感いただいたり、アガティカのチームも評価いただいたことも要因だと思います。

―― チームのメンバーもリモートで勤務されているのでしょうか。

はい。他のメンバーは業務委託で東京にいます。メディカルノート出身やエムスリー、コールドクター出身の医療IT分野に長けたメンバーがいたことも評価いただけたのだと思います。

今後のビジョン

―― 一見、複雑で異色のキャリアに見える藤井さんですが、早くからフィンテックに目を付けて逆算的にキャリアを積み上げている一貫性を感じました。

確かに謎めいたキャリアだとは思うんですが(笑)、フィンテックに筋を通してきた自負はあります。あとフィンテックの起業家でも医療現場に着目する人は多くないですし、逆に医者から起業される方だと医療機器とかのアップデートをやられる方が多いので、ニッチな立ち位置に立てているかもしれないです。

―― アガティカ社の今後のビジョンについてぜひ聞かせてください。

前述の通りで今後はキャッシュレスにとどまらず患者さんと医療機関を繋ぎ、今までにない診療体験ができるようなサービスを作っていきたいと考えています。

キャッシュレス化が進んでいないというのはもちろんありますが、効率的じゃない部分が残っていたり、人手不足が叫ばれていたり、そうした医療が抱えている課題全般を解決していたいと考えています。今回調達した資金もそうしたサービスの開発に充てたいと考えています。

―― ぜひStartPassとしても継続的にご支援させてください。

はい。プレシリーズA、シリーズAで資金調達できるかは特に難しいところだと思うので、ここをクリアできるような業績を作っていければ以後も事業を伸ばしやすいと思うのでぜひ引き続きご支援いただけるとありがたいです。

―― 最後に、今後StartPassを使うかもしれないファウンダーの方にひとことお願いします!

そうですね。StartPassを使うことで、スタートアップとしての事業推進のスピード・質が飛躍的に向上すると感じます。特に僕みたいな地方スタートアップで経営資源が足りていないと感じる人は利用すると良いかなっていうのはすごく勧められる点だと思いますね。

―― お忙しい中お時間いただきありがとうございました。


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