"終わらないタスク“との向き合い方。 Zenmetry CEOが問い直す、スタートアップの働き方と生産性。│Zenmetry CEO 長友好江さん

株式会社Zenmetry 代表取締役 CEO / 長友 好江(ながとも よしえ)さん
早稲田大学政治経済学部卒業。総合商社を経て、IT業界に転身。 ワークスアプリケーションズ、コンカー、Anaplanで導入・開発・CSの立ち上げを経験。 2021年にG's ACADEMY TOKYO DEV21期に入学しプログラミングを学ぶ。 2022年2月の卒業制作発表会Global Geek Auditionで優勝・オーディエンス賞のW受賞。 2022年4月に受賞した製品を事業化するべく法人を設立。
StartPassは「日本をスタートアップしやすい国へ。」をビジョンに掲げ、これまで累計1,000社以上のスタートアップ・ファウンダー(起業家)の伴走支援を行ってきました。
今回のnoteでは、StartPassを活用いただいているスタートアップ・ファウンダー、ZenmetryのCEO 長友 好江さんにお話を伺いました。
カスタマーサクセスとしてのキャリアを歩む中で、コロナ禍で働き方の限界を痛感し、自らプログラミングを学び起業へと踏み出した長友さん。AIお仕事メンターサービス「Zenmetry」の開発背景や、スタートアップで働く誰しもが抱える「終わらないタスク」の悩み、そして生産性を高めるための新たなアプローチについて詳しく伺いました。
タスクに追われる毎日に終止符を打ちたい方、より良い働き方を模索している方は必見です。
CSキャリアを経て「一つのコトに没頭できる感覚を作りたい」

―― まず長友さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
私のキャリアを辿ると、長らく業務アプリの導入やカスタマーサクセスとしてキャリアを歩んできました。
Anaplanではカスタマーサクセスの部長でした。在籍していた2020年の夏に新型コロナウイルスが流行して、保育園や学校が一斉に閉鎖した時期がありましたよね。
その時に、子供のケアをしなくちゃいけないけどSlackもメールもひっきりなしで、WebMTGも隙間なく入って来て。ご家庭がある皆さんもそうだったと思いますが、正直日中は全く仕事になりませんでした。
それでも部長というポジションゆえに「即レスしたくてもできない」格闘がずっと続いて、ある時に体力の限界を感じて退職してしまいます。
その後、フリーランスとして国内スタートアップの支援をしていました。
そこからは、フリーランスとして国内からグローバルを狙うソフトウェア系のスタートアップを手伝っていました。コンカーやAnaplanなど、外資系のソフトウェア企業に長く在籍していたこともあって、「世界で勝負できるソフトウェアが日本から現れたらすごく良いのに」とは漠然と思っていました。
―― ここから起業へはどのように結びつくのでしょうか。
丁度同じタイミングで、G’s Academy(ジーズアカデミー)に出会うんです。起業家自身がプログラミングを学んで、自分でモックアップを作っていく所まで学べる起業家養成スクールです。
フリーランスになってから多少は時間の余裕ができて、夜にプログラミングをひたすらやっていました。そうしたら、何かに作業を遮られることなく一つの物事にずっと没頭できるこの感覚がとにかく本当に楽しかったんです。
仕事にきちんと集中したくてもついつい作業を中断してしまう。
これはきっと世界共通でビジネスパーソンが抱えている課題のはずだと考えて、G’s Academyの卒業制作でZenmetryのコンセプトとなるプロダクトを開発することになりました。
ユーザーヒアリングを重ねるたびに、皆が同じように課題に思っているということと、この世界にはこの課題の決定打になりうるツールはまだ存在していないということが見えてきました。
何より、この課題を私が解決しないと、私の子供が大きくなった時に子供がこの働き方を続けていることが想像できないと言いますか、少し違う世界にして手渡してあげたいと思ったんです。

G’s Academyの卒業制作デモデーの「GLOBAL GEEK AUDITION」で優勝・オーディエンス賞を受賞して、ここからZenmetryとしての事業をスタートさせます。
即レスは本当に正義? スタートアップが抱える一生終わらないタスク
―― 今のお話を聞いて気になりましたが、長友さんから見てどうしてタスク管理ツールには決定打と言えるものが存在していないと思われますか。
そうですね、先ほど話したZenmetryの構想初期と今現在で考え方は少し異なるんですが、今の考えでは「タスクの起票自体の面倒さ」に尽きると思います。タスクツールを立ち上げて、色んな項目をポチポチ入力するので、たとえタスクがどんな内容であっても起票するだけで最低でも1分、2分くらいはかかってしまいますよね。
これまでのタスク管理ツールだとここを解決しきれていなくて、ゆえに決定的に市場シェアを大きく取っているツールがまだないんだと考えています。起票自体がしんどいと徐々にやらなくなり、タスクリストも不完全になって見なくなっていくんです。
―― とっても耳が痛いです…。
いえ、人間って面倒くさいことはやらなくなってしまうものですから。こうして、どんなタスク管理ツールでも結局は長く使ってもらうのが非常に難しいゆえに決定打となるツールが存在していないと考えています。
Zenmetryは起票の手間を最小限にする点を特にこだわっていて、Google Chromeの拡張機能からすぐに起票できるように工夫しています。
そもそもの話ですが、「生産性って何なのか」という共通認識が私たちの中でないことが根本的な課題ではないかと思っています。
例えば「即レスできる人は仕事がデキる」ってよく言われるじゃないですか。でも、即レスした結果、日中取り組みたかった仕事は深夜までかかる。クオリティが落ちる。最悪の場合、仕事が完了しないこともある。これらは本末転倒なんです。
お客様のお困りごとに対してレスポンスを素早くすること自体が重要な仕事だったらそれでいいんですが、それだけが仕事じゃない人も多いはずです。
本当はアウトプットの量や質でその人の働きが評価されるべきことなんですが、この辺りの定義が学者の方も含めてあんまり決まっていないように思っています。定義できないものは仕組み化できていない……ということなんだと考えています。
―― なるほど。人が重要な課題に取り組むというのは生成AI時代における働き方のヒントのように思えます。
そうですね。AIが業務をすべて自動でこなしてくれるという世界観もあるかと思いますが、人間が見て判断するべき業務はどこまで先の未来にも存在するはずなんです。
StartPassでもエンジェル税制の代行サービスを提供されていますが、ああいった法的な手続きは、制度が常にアップデートされるため、AIに指示してもうまく対応できないことが多いんです。人が法を解釈して適用させる、そうした工程が必要なはずなんです。
―― おっしゃる通り、一度ご自身で対応した方なら分かると思います…!
いつか全自動で出来るようになるかもしれませんが、「起業家がここで困っていて、この手続きを代行しよう・効率化してラクにしてあげよう」と思い付いて事業化すること自体は人間にしかできないはずだと思っています。
人間がやるべきことだけにもっとフォーカスできるようにするのがZenmetryが目指すビジョンです。
ユーザーの声で辿り着いたZenmetryが今月リリース。
―― 初めてお会いした頃からプロダクトの機能が少し異なっていますよね。ここまでの変遷についても聞いてもよろしいですか。
はい。G’s Academyの頃から考えていた初期のアイデアではSlackからTeams、MessengerやWhatsAppなど、あらゆるチャットツールの通知を一つのツールで可視化・管理できるというプロダクトを構想していました。
2024年4月のシードラウンドの資金調達もこの方針でのプロダクトの開発を目的として実施したものでした。

―― その機能も素晴らしいと思いましたが、開発する機能を転換した背景を教えてください。
答えはシンプルで、タスクを一か所に集約しても見落とすものは見落としてしまう、という声が多かったからでした(笑)。
また、チャットツールによっては法的な懸念を払拭しきれない等々の課題もあり、もっと根本的なソリューションにできないかと考えるようになりました。
アクセラレータープログラムに参加する中でのフィードバックやテストユーザーの声を集めて機能改善を重ねた結果、今のサービスに辿り着きました。
―― 変遷を経て先日オープンβ版がリリースされましたが、改めて今のZenmetryの特長を教えてください。
はい。例えば、今回のようにStartPassさんからインタビューの打診が来ていたらそのメッセージを選択するとDeepLのように「Z」マークが表示されます。これを押すと、「明日までに返事しようかな」という感じで自分のタスクを登録できます。

そこで同時にやっているのが、タスクを起票した時にURLの自動保存です。
Zenmetry上で起票したタスクを開いて、そこからすぐそのページに戻れるんですよね。どこで発生していたタスクかを見失わなくなりますし、タスクに着手しやすくなります。
―― これがChromeの拡張機能として使えるのも、導入しやすさの工夫が伺えます。
そうですね。さらに、オープンβ版ではスケジュールツールとの紐づけも出来るようになっています。
StartPassさんのウェビナーとかイベントとか、日時が決まっているものをそのままGoogleカレンダーにスケジュールとして入れることも出来ます。
「生産性」にチームで立ち向かう
―― 今後のZenmetryが目指す方向性について教えてください。
今後は、チーム版を検証していく予定で、カスタマーサクセスなどの顧客向き合いのメンバーのタスクが可視化されることでメンバー間のフォローがしやすくなるような、そういった働き方を作りたいです。
誰かが急に休んでしまったときにそのバトンをチームで分解できるように。休みたいときに休めるようにしたいんです。
また、Zenmetryを有効に活用してもらうために、個々人のタスク実行サポートのトレーニングも提供しています。これが毎回好評で、トレーニングを提供しながらチーム版の検証をしていければと考えています。
―― 冒頭に話していた起業の原体験にもつながっていますし、Zenmetryの世界観がシームレスに拡張していく感じが素晴らしいですね。
ありがとうございます。とはいえ、先ほどの話にもつながりますが、生産性の高め方って今も個人任せなんですよね。
なので、チームとしてこの課題に向き合う環境を整えるだけでも、これまでとは全く変わってくると思うんです。起業家さんを数多く支援しているStartPassさんでもお使いいただけるツールだと思います。
―― ありがとうございます。今後の事業拡大という点でStartPassもお力添えできると嬉しいです。
そうですね、シードラウンドの資金調達をどうしようか悩んでいる時に利用開始し、今もStartupNightをはじめとするイベントやメンタリングイベントに参加させていただいています。
振り返ると、StartPassさん経由じゃないと会えなかっただろうなというエンジェル投資家の方も多くいるんです。実際にその方からの投資に直接繋がったという訳ではないんですけど、色んな方と接点を持って壁打ちできるという点だけでも貴重ですね。
東京だとこうしたイベントは多く開催されていますけど、一通り参加してしまうとどのイベントに行ってもだいたいお会いしたことがある人の方が多くなってきます。StartPassさんのイベントに行くと、普段会えないキャピタリストの方やエンジェル投資家さん、新しいCVCのご担当者の方などよくいらしているのでとても有り難いです。
―― 会場内で、起業家同士でお話されているのも印象的です。
そうですね。起業家同士で繋がれるのも初期の起業家にとっては良い点だと思います。私たちのツールのβ版を申し込んでくれた方もいますから。
あとは、StartPassの方は皆さん起業家の立場に立って応援してくれるのが良いですよね。(笑) 常に一人で戦う起業家からすると意外と貴重な存在ですから。そういう意味でStartPassさんが作ってくれる場ってポジティブなことが起きやすいんですよね。心理的安全性の高いスタートアップイベントって貴重だと思います。
―― その言葉を聞いて気が引き締まりました…!本日はありがとうございました。
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