「初めての資金調達は、StartPassでの出会いから。」NTTドコモ出身ファウンダーが語る社内起業とファイナンスのリアル│ReCute CEO 山下 萌々夏さん

株式会社ReCute CEO / 山下 萌々夏(やました ももか)さん
2021年 上智大学を卒業。同年 NTTコミュニケーションズ株式会社に新卒として入社。共創事業創出・推進に関わる。
2023年 NTTドコモの新規事業創出コンテスト「docomo STARTUP CHALLENGE」を経て、ReCuteの新規事業アイデアを草案。
2024年 NTTドコモからスピンアウトする形で株式会社ReCuteを創業。NTTドコモ、ポーラ・オルビスホールディングスらから資金を調達。
StartPassは「日本をスタートアップしやすい国へ。」をビジョンに掲げ、これまで累計1,000社以上のスタートアップ・ファウンダー(起業家)の伴走支援を行ってきました。
今回のnoteでは、「美のインフラ化」を目指すスタートアップ、株式会社ReCute(読み : りきゅーと)、代表の山下 萌々夏さんはNTTドコモの社内プログラムからスピンアウトして起業。社内起業のリアルから初めての資金調達までの軌跡を伺いました。
ヘアアイロンのレンタルスポット「ReCute」
―― 本日はお時間いただきましてありがとうございます。 まずReCuteについて簡単に教えてください。
はい。ReCuteは商業施設やオフィスビルなどの化粧室で簡単にヘアアイロンをスポットでレンタルできるサービスを提供しています。設置場所は、オフィスビルや商業施設、コンサート会場、飲食店など多岐にわたりますが、特に、駅近や動線上にある施設での利用が多いです。
女性は外出前にヘアセットをしても湿気や時間の経過により髪型が崩れることがあります。そのため、外出先でヘアセットを直したいというニーズが常にあります。
これまでも、プリクラ専門店やメイクラウンジ、インターネットカフェなどでヘアアイロンをレンタルすることができました。しかし、それぞれに課題があります。例えば、プリクラ専門店は中高生向けの施設が多く、20代~30代の女性が入りづらいといった点です。メイクラウンジだとチェックインが必要だったり、場所が限られていたると、使い勝手の課題がありました。
また、市販のポータブルアイロンは小型ですが意外と重く、バッグに入れるのも負担になりますし、小型になればその分巻ける範囲も限られています。
―― この事業のアイデアはご自身の経験から思いついたものでしょうか。
はい。中学生の頃からヘアアイロンを常に持ち歩いており、どこでもヘアセットをしていました。その経験から同じ悩みを抱える女性にとって役立つサービスを作りたいと考えました。

―― ぜひ、山下さんご自身についても教えてください。山下さんはNTTドコモから社内起業したと聞いていますが、スピンアウトに至るまでの道のりについて教えてください。
2021年4月に新卒としてNTTコミュニケーションズに入社*し、2024年の7月に株式会社ReCuteとして独立しています。
当時、NTTを含むエンタープライズ同士の共創事業を作る部署に在籍していたのですが、なかなかプロジェクトが前に進まない…という光景を目にしていました。NTTグループに限った話ではなく、PoC(Proof of Concept : 概念実証)まではするけれどその後の事業化は難しいというのもよくある課題だったと覚えています。
―― この部署に配属された当初から起業したいと既に考えていたのでしょうか。
いえ、当時はとにかく目の前の業務に食らいつく一心でした。ただ、こうした光景を目にしたときに、何か手を動かさなくてはと思いましたし、新規事業創出に向けた取り組みがスキルアップにつながればいいと考えて直感的に行動しました。
入社して2年目の2022年に、docomo academyという社内起業の研修プログラムに参加したことを機にスピンアウトを目指すようになりました。その後何度か事業案のピボットを繰り返したのちに、ReCuteの事業モデルを構想しました。
検証は上手く進んでいたはずなのに…。落選で味わった挫折
―― docomo STARTUPでの当時のエピソードをお聞かせください。
研修プログラムに参加したのち、社内のピッチコンテストに挑戦し、社員から300件以上のエントリーがある中で、最後の5チームにまで選ばれていました。
プログラムの中では事業検証がどれほど進んでいるかを表すステージがありました。私は5チームの中で最も進捗が進んでおり、ユーザーから実際にお金を支払って利用されていたため自信を持って挑んだのですが、結果として入賞できませんでした。
ピッチコンテストで受賞し、弾みをつけて一気にスピンアウトに向けて動くつもりでしたが、結果は振るわず大きく自信を失いました。
―― 今振り返って思う原因や反省はありますか。
当時の事業プランでは一見して市場が小さく見えてしまう見せ方になっていたと感じます。ヘアアイロンに限定した見せ方になってしまっていたので、ヘアアイロンを普段使わない方からの理解・共感は全く得られませんでした。
そして、ピッチコンテストの審査員も外部から招いたVC(ベンチャーキャピタル)のキャピタリストの方でしたから、スタートアップとしての事業アイデアの評価を真正面から受け入れることになりました。
「実際に悩む女性が居たとしてもこのままだと事業として成立しないし、資金調達してグロースしていくスタートアップにもなれない」という事実に気づかされてショックを受けました。
―― エンタープライズに身を置きながらスタートアップらしい事業を磨き込むことの難しさを感じます。
ドコモのスピンアウト制度では、社内での事業検証のプロセスを踏んだあとにリード投資家となるVCを見つけて投資を受けることがスピンアウトの条件(NTTドコモからフォロー投資を受けて起業する条件)になっています。
そして、ピッチコンテストの結果が振るわなかったこともあって、半年後の2024年3月に控えていた社外のプログラムへの参加を除きReCuteのプロジェクトは殆ど打ち切りになってしまいました。
事実上活動は休止となり、3月にはプロジェクトも終了するという中、どうしても諦めがつかず、半年以内に資金調達できる事業プランに仕上げて事業化すると固く決意しました。
―― 本業のかたわら事業検証をして、さらに資金調達活動となると大変ですね。
事業検証が終わっても資金調達の壁を乗り越えるのが大変で、docomo STARTUP でピッチをした他のチームもこの壁を前にして苦戦する方を多く見てきました。
もちろん私もファイナンスについて考えたことが無かったので同じように頭を悩ませていました。
エンジェル投資家との出会いで変わった風向き
―― このタイミングでStartPassのご活用を始められたと聞いています。
はい。StartPassの利用を始め、StartupNightなどにも参加させていただきました。実はStartPassさんを通じて繋がったエンジェル投資家の方が、ReCuteに出資を決めてくださった1人目の方だったんです。
それまでも手探りで複数の投資家と面談しましたが、なかなか出資を検討してもらえる段階には至りませんでした。事業に対する自信を失いかけていた頃に初めて出資意向をいただき、もう少し頑張らなくてはと思い直しましたし、振り返ってみるとStartPassでのこの出会いが強い励みになりました。
―― 嬉しいです。この頃からVCへのアプローチ手法にも変化がありましたか。
はい。壁打ちしてくださる方を増やしていくことができたので、徐々に事業プランがブラッシュアップされていきました。
そして壁打ちにご協力いただく方も、事業や課題感への共感を得られるような、そして味方として巻き込んでいけるような女性のキャピタリストに狙いを定めていました。
加えて、事業シナジーが明確にあるCVCの中でアーリーフェーズのスタートアップにも出資できる企業も視野に入れながら動くようにしていました。
―― そうしたプロセスを経て、ポーラ・オルビスキャピタルさんからの出資をいただくんですね。
はい。アーリーステージへの出資、女性起業家の支援、コスメ、ビューティテックへの投資が多いことも分かっていたので、相性が良いはずだと思っていました。ReCute設立後のオフィスもここ(ポーラ青山ビルディング)ですし、サポートも手厚いです。
2024年3月に出資が決まり、本来は終了予定だったプロジェクトでしたが、ドコモの方々に無理をお願いして調整していただき7月にスピンアウトして現在に至ります。
ドコモ社内での調整も相当大変だったと思います。共同創業者の下川もドコモから出向という形で参画していて、他のメンバーも出向や業務委託という形で参画してもらっています。
そして日々使っていただいているユーザー、設置いただいた施設の皆さま、TRIP*を通じて強力な支援をしてくださる各電鉄会社さんや事務局の皆さん、StartPassさんなど、色んな方のご協力があって今のReCuteが成り立っていると日々実感します。
このプロセスで単に事業の資金を得たというだけでなく、スタートアップとは何か、事業やチームを作るということが何かを初めて実感できたと思います。
TRIP (Tokyo Railway Innovation Partnership) … 東京都のスタートアップ支援プログラム。鉄道事業者が中心となり、アセットを提供しながら事業共創、実証実験を行う。
ReCuteの事業の面白さ、これからのビジョン
―― こうしたストーリーを経た、ReCuteの事業としての面白さを是非教えてください。
美容のドメインに特化しながら、リアルサイトの接点とモバイルの接点をどちらも持っている点は非常にユニークだと思います。試してみたかったヘアアイロンをレンタルでき、モバイルアプリ上に購買動線が表示されます。もちろん、今後はヘアアイロンだけでなく、あらゆる商品やキャンペーンへの応用ができるはずで、エンドユーザーとの接点が特殊かつ豊富なのはReCuteならではです。
また、ReCuteを設置することで施設への誘客にもつながるので、ReCuteはB2B2Cとしての性質も併せ持っています。リアルな拠点を持つ方であればどんな事業者さんとでも、女性の悩みについて真剣に話し合える楽しみもあります。実際に自分たちが使うサービスを作ることができ、B2Bとして事業を拡大していくダイナミックさもある点が面白いと思います。
―― 目下の課題はありますか。
やはり、どのタイミングで一気にアクセルを踏むか、そうした戦略は日々悩んでいます。起業はもちろんどれも初めてのことばかりですから。また、チーム体制の課題も尽きないです。どのポジションも特にそうですが、特にエンジニアの採用は目下困っています、 ReCuteに興味ある方はDMください(笑)
―― また、告知したいことなどあれば是非最後にお願いします。
この記事が公開されるタイミングの前後で、京王電鉄・小田急電鉄の駅構内でポスター広告を掲出します!
色んな方にサービスを認知してもらうこと、使って広めてもらうことこそ何より大事ですので、ぜひこの機会に使ってみてください。(利用可能な施設一覧はコチラ)
―― ありがとうございました!
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