宇垣美里×at FOREST代表・小池友紀 | お墓選びの現状を一新。私が作るしかなかった「循環葬」という新しい選択肢

宇垣美里さんが、スタートアップで働く人や、新しい挑戦に挑むビジネスパーソンの仕事観に迫る本連載。今回のゲストは、新しいお墓の選択肢「循環葬」を提供するat FOREST株式会社 代表取締役CEOの小池友紀さんです。
小池さんを迎えた対談は、全4回にわたってお届けします。第1回目となる今回は、広告業界を経て15年以上フリーランスとして活躍したのち、家族のお墓探しを機に葬送業界の課題に直面し、「誰もやらないなら、私がやるしかない」と起業を果たした異色のキャリアについて。既存のお墓に対する女性特有の葛藤や違和感を事業へと昇華させたその原動力と使命感についてお伺いしました。
プロフィール
話し手
小池友紀(at FOREST株式会社, 代表取締役CEO)
聞き手
宇垣美里
ファシリテーター
小原(株式会社StartPss, 代表取締役)
根拠なき自信から始まったキャリアの歩み
宇垣さん:広告業界に入って3年という早さで、フリーランスになろうと思われたのはなぜだったのでしょうか?
小池さん:入社前から、クリエイターの友人と「3年で独立する」と固く約束していたんです。
当時は若さもあって、根拠のない自信に満ちていたのだと思います。私はコピーライターを目指していて、ヘアメイクなど別の分野で活動する友人たちと、「いつかみんなで独立して、一緒に仕事ができたらいいね」とよく話していました。
1社目は本当に人に恵まれ、さまざまな経験もさせていただきました。辞めたくないと思うほど、よい会社だったんです。それでも、最初に交わした約束は曲げたくなかった。そうして、丸3年で退職し、フリーランスの道に進みました。
宇垣さん:ご自身との約束だったからこそ、簡単には変えられなかったのですね。その後、15年以上フリーランスとして活躍されるなかで、ご自身の強みはどこにあったと感じていますか?
小池さん:関西を拠点に活動していたことは、大きな強みでした。若手クリエイターとして重宝していただけたからです。
同業者の多くは関東へ出ていくので、関西には若手があまり残りません。加えて、ファッションやコスメなど、ライフスタイル領域を担える人材も不足していました。
そうしたライバルの少ない環境にいたことで、ライフスタイル関連の仕事を数多くご依頼いただけたのだと思います。
宇垣さん:関西にいたからこそ、競争が少ないぶんチャンスもあったのですね。これまで手がけてきたお仕事のなかで、特に思い入れのあるプロジェクトがあったらお聞かせください。
小池さん:地元・兵庫県神戸市にあるランドマークとなるホテルのリブランディングは、とくに印象深いプロジェクトです。
そのホテルは、私が生まれた頃からずっと海沿いに建っていて、学生時代にはカップルの定番デートスポットとして知られるなど、地元の人にとってとてもなじみ深い場所でした。大手広告代理店も参加する大規模なコンペでしたが、幼い頃からそのランドマークに抱いていた強い思い入れこそ、私たちの最大の武器だったのかもしれません。
最終的にコンペを勝ち取り、「スローラグジュアリー」というコンセプトを掲げて、さまざまな改修に繋げることができました。クリエイターとしても、大きな財産になったと感じています。
葬送業界に感じた「違和感」の正体
宇垣さん:フリーランスのクリエイターとして順調に活躍されていたなかで、まったく異なる葬送業界で起業する道を選ばれました。どのようなきっかけがあったのでしょうか?
小池さん:最初から起業を考えていたわけではなく、循環葬というアイデアも、もともとはクライアントワークの延長で進めていたプロジェクトのひとつでした。
ただ、実際に形にしてさまざまな方にお話しすると、想像以上によい反応をいただいたんです。その一方で、葬送業界には古くて閉鎖的なイメージがありました。人生で何度も経験するものではないからこそ、新しい人が入りにくい領域でもあります。

「このまま誰も変えないなら、自分たちも今までどおりの選択肢から選ぶしかない」――そんな危機感が強くなり、自分がやるしかないと感じて法人化を決めました。
宇垣さん:誰も切り拓かないなら自分がやる、という思いがあったのですね。ご親族との別れや、ご両親のお墓の引っ越しを経験されたことも背景にあったとうかがいました。
小池さん:私の両親は70代半ばで、私たちは3姉妹です。お墓を継ぐ人がいない状況でした。加えて、長男である父の実家のお墓が岡山県の山中にあり、お墓参りのたびに長距離を移動して日帰りする必要があったんです。両親も子どもたちも関西に住んでいたので、「それならお墓をこちらに移そう」という話になり、実際に探し始めました。
ところが、色々なお墓を見にいきましたが、自分がお金を払ってでも選びたいと思えるものは、ひとつもなかったんです。母にも意見を聞くと、母も同じ気持ちでした。ただ、「女性は夫の家のお墓に入るなど、選択肢は限られているから仕方ない」と、半ば諦めていました。
今の時代、暮らしのあらゆる場面には多様な選択肢があります。女性の生き方も、自分で選べるようになってきました。それなのに、人生の最期を迎える場所だけは、古い慣習に引き戻されてしまう。その感覚に、強い違和感がありました。
宇垣さん:お墓に関してだけは、なぜかとても古い価値観が残っていますよね。周囲の目もありますし、「それって本当に合理的なのかな」と感じても、なかなか口にしづらい方は多そうです。
小池さん:そうですね。慣習の力が強い業界なので、疑問があっても言い出しにくい空気があります。実際、周囲に話を聞いても、違和感を持ちながら「仕方ない」と受け入れている人が少なくありませんでした。だからこそ、私のような新しい立場の人間が入って変えていかなければならない。そんな使命感のようなものが芽生えました。
宇垣さん:その後、さまざまなお墓のあり方を調べられたと思います。既存の形式や販売のされ方に対しては、具体的にどのような違和感があったのでしょうか?
小池さん:私自身、石のお墓に入りたいとはあまり思えませんでした。それなのに、それが当たり前とされ、選択肢があまりないことに大きな違和感がありました。
また、お墓は高額な買いものです。それにもかかわらず、時計や家具のような高価な品を選ぶときに重視される「体験」の価値が、十分に伴っていないと感じたんです。購入するときだけでなく、生きているうちから関わりながら、もっと納得感のある価値をつくれないか。そう考えてたどり着いたのが、循環葬でした。
15年前から変わらない、女性たちの葛藤
宇垣さん:共同創業者の方のお母様が15年前に望んでいたことと、小池さんのお母様が望んでいたことは、実は同じだったとうかがいました。
小池さん:当社のCOOである正木の母は、15年前に亡くなられています。生前、「石のお墓には入りたくない。大好きなペットと一緒に眠りたい」と話していたそうです。
ただ、当時はそうした選択肢がまだ広く知られていませんでした。長男だった正木が親族に相談しても、「そんな墓はない」と流されてしまったそうです。結果として、ペットの遺骨はそのまま残され、お母様だけが父方のお墓に入ることになりました。正木にとって、この出来事は長く心残りになっていたといいます。
宇垣さん:お墓に入ったあとまで気を遣わなければならないなんて、少し切ないですね。
小池さん:女性にとって、これはとても切実な問題です。私の母も「夫の家のお墓に積極的に入りたいという女性は少ないわよ」と話していました。私自身も、結婚して長男の妻になったとき、親族から「あなたの入るお墓はここよ」と決められ、強い違和感を覚えたことがあります。
「遺骨はどこかに撒いてほしい」という女性の声の背景には、「最期まで気を遣いたくない」という本音があるのではないでしょうか。そうした思いを抱えながらも、ほかに選択肢がないまま、あきらめている方は決して少なくないと思います。
宇垣さん:私の友人のお母様も「遺骨を撒いてほしい」と話していたのですが、その言葉の裏にそうした葛藤があるとは気づきませんでした。どれだけ仲がよくても、義理のご両親には気を遣ってしまうものですよね。
小池さん:そう望んでいても、結局はかなえられていない。そんな現状が、いまもあります。
だからこそ、新しい選択肢を示すことに意味があると考えています。これまで当たり前とされてきたお墓のあり方から自由になれれば、気持ちまで少し軽くなる方もいるはずです。私は、そんな変化を生み出していきたいと思っています。
誰もやらないなら、私がやる。循環葬という希望

宇垣さん:新しいお墓の形として、樹木葬や散骨といった選択肢も広がっていますよね。そうした比較的新しい供養のかたちに、どのような印象を持たれましたか?
小池さん:私が求めていた「大自然に還る」というイメージとは、少し違っていました。
私は六甲山などに親しんできた、いわば山派なんです。山や森を愛する人が自然に還れる場所は、意外と少ないのではないかと感じました。もちろん、海での散骨は、海が好きな方にとっては魅力的な選択肢でしょう。
樹木葬も実際に見学しましたが、きれいに整備された公園型が多く、少し人工的に映りました。プレートの下にカロートと呼ばれる石製の納骨スペースがあり、そこへ骨壺のまま納める構造です。従来の石のお墓が下にあり、上の長方形のお墓がプレートに置き換わったような、いわばマンション型に近い造りだと思いました。
宇垣さん:私は海派なので、海に撒いてほしい気持ちはあるんです。でも、どこにどう撒けばよいのかはわからなくて。昔の映画で散骨のシーンを見たときも、「あれは本当に合法なのかな」と思いながら見ていました。
小池さん:現在は、散骨に関するガイドラインが定められています。
法律に「散骨」という項目が明確に書かれているわけではありません。ただ、さまざまな人が思い思いのやり方で行ってしまわないよう、一定のルールは整えられています。どこにでも自由に撒いてよい、というものではないんです。
宇垣さん:調べたほうがよいとわかっていても、つい後回しにしてしまう人は多そうです。いざそのときになって、選択肢がほとんどないと気づく方もいらっしゃるのではないでしょうか。ご自身が当事者として「自分が選びたいものをつくる」という意識を持っていたからこそ、ここまでの行動力で会社を立ち上げられたのだと感じました。
小池さん:自分が心から選びたいと思えるものをつくりたい。その思いが、いちばんの原動力でした。最初から起業したかったわけではなく、当時は「誰かがやってくれないだろうか」と本気で思っていたんです。
これまで広告業界で、さまざまな新規事業を見てきました。課題があれば、誰かが必ず解決策を形にしていく。そんな場面を何度も目にしてきたんです。「もっとよいものはないか」と探せば、新しいサービスはたいてい見つかりました。けれど、お墓に関してだけは見つからなかった。誰も新しい選択肢をつくらないのなら、自分がやるしかない。そう腹をくくりました。
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