宇垣美里×SilverX 中島大志 | 「インテリジェンスを超える会社を作らないか」。共同創業者からの一言で始まった新たな挑戦

    宇垣美里さんが、スタートアップで働く人や、新たな挑戦に踏み出すビジネスパーソンの仕事観に迫る本連載。今回のゲストは、「人類の可能性を年齢から解放する」をミッションに掲げる株式会社SilverX代表取締役CEOの中島大志さんです。
    全4回でお届けする対談の第3回では、株式会社VOLLECTのM&Aを経て、2度目の起業に踏み出した原動力に迫ります。さらに、人材業界に残された「シニア層の活躍」という課題の解決をAI活用によって目指すロードマップや、異なるスキルと思考を持つ共同創業者・藤澤専之介さんとの出会い、最高の仲間と目指すビジョンについて、中島さんに伺いました。


    プロフィール

    話し手
    中島大志(株式会社SilverX, 代表取締役CEO)

    聞き手
    宇垣美里


    最高の仲間と右肩上がりに成長する会社へ。M&Aを経て見えた2度目の起業への原動力

    宇垣さん:株式会社VOLLECTのM&Aを経て、再びゼロから起業されました。その原動力は、どこにあったのでしょうか?

    中島さん:最高の仲間を集め、右肩上がりに成長し続ける会社をつくりたいという思いが、一番の原動力ですね。
    前回のM&Aは、僕のなかでは100点ではなく、70点ぐらいの決断だったと思っています。会社をずっと右肩上がりに成長させられていたら、M&Aをしなくてもよかったのではないかという思いもありました。
    2026年3月末にVOLLECTを退任したとき、自分で離れると決めたにもかかわらず、「このメンバーと離れたくないな」と思ったんですよね。僕にとっての幸せは、起業やビジネスを通じて、さまざまな人との関係を築いていくことなのだと、今回のM&Aを通して改めて実感しました。
    起業の一番の魅力は、誰を採用するのかをすべて自分で決められることです。もう一度、最高の仲間を集め、M&Aをしなくても成長し続けられる会社をつくれたら、「僕の人生はよかった」と思えるのではないでしょうか。

    宇垣さん:1回目と2回目の起業で、気持ちにどのような違いがありましたか?

    中島さん:何が重要なのか、その要諦をかなり理解した状態で始められる点は、1回目と大きく違いますね。
    最初の起業では、本当に右も左もわからず、暗中模索の状態でした。ただ、VOLLECTを創業して8年間経営したことで、「これはこうだよね」とスピーディーに判断できるようになりました。

    宇垣さん:ある種の安心感というか、道筋がわかったうえで、次の選択ができるような感覚なのでしょうか。

    中島さん:ただ、それはそれで、1回目の起業時にあった「何でも行動してみよう」という勢いが、少し失われているのかなと思ったりもします。

    宇垣さん:そこは、大人になったということでしょうか?

    中島さん:そういうところはあるのかなと思います(笑)。

    人材業界に残る「シニア層の活躍」という課題。AIを起点に描く解決へのロードマップ

    宇垣さん:SilverXが掲げる「人類の可能性を年齢から解放する」というビジョンは、どのような課題意識から生まれたのでしょうか。

    中島さん:人材業界がいまだに解決できていない、「シニアが活躍できる場所や環境の提供」という課題に向き合うためです。
    僕は新卒から人材業界にかかわり、さまざまなサービスを見てきました。そのなかで、まだ本格的に着手されていないと感じたのがシニア領域だったんです。日本では今後さらに高齢者が増えていきます。世界に目を向けたとき、日本が他国よりも先行しているのは、まさに高齢化ですよね。
    だからこそ、「高齢者×働く」という課題を解決できれば、その仕組みを世界に輸出できるほど大きな挑戦になります。また、スタートアップにおける最大の競争優位性はメンバーだと考えています。最高の仲間を集めるためにも、とにかく大きなビジョンを掲げたいという思いがありました。

    宇垣さん:なるほど。では、改めて現在SilverXで行っている事業について教えてください。

    中島さん:現在、正面から向き合っているのは、まさにシニア領域です。長く経験を積んできた方が、年齢を理由に力を発揮できなくなるという課題にAIを掛け合わせ、もう一度活躍できる状態をつくる事業に取り組んでいます。たとえば今は、金融機関で長く働いてきた50代の方を対象に、AIを活用して実務で成果を出せるようになるための研修という形から検証を始めています。
    ただ、創業当初から迷わずシニア領域に取り組めていたわけではありません。シニアは非常に大きな課題である一方、そのまま収益化するのは相当難しい。何カ月も「どの切り口なら解決できるのか」を考え、さまざまな可能性を試してきました。そのなかで、最終的に「やっぱり自分たちが本当に取り組みたいのはシニアだ」と、正面から向き合う覚悟を決めたんです。
    シニア領域にAIを掛け合わせるのは、AIを使いこなせる人材が、まだ十分に集まりきっていないからです。AIを使いこなせるシニアが生まれれば、企業から求められる存在になると思っています。

    宇垣さん:新しく生まれた技術だからこそ、学習歴では若い方と変わらないということですね。

    中島さん:そうです。それに、企業がシニアの採用に慎重になる背景には、「大丈夫なの?」というバイアスの影響が大きいと思っています。最近の60代、70代はめちゃくちゃ元気じゃないですか。そのバイアスを解き放つ手段として、AIは大きな可能性を秘めています。
    僕らが注目しているのは、「その業界や職種の専門性を持つ人がAIを取り入れる」という点なんです。たとえば、AIだけに詳しい人がアナウンサー向けのサービスを作っても、実際にアナウンサーをしている方からすると、「いや、そんなん微妙なんだけど、いらない」ってなりますよね。

    宇垣さん:いらないってなりますね(笑)。

    中島さん:アナウンサーの業務や要諦を理解している人がAIを学び、作ったもののほうが、圧倒的に価値があると思うんです。長く経験を積んできた人ほど、その専門性とAIの掛け合わせは強くなります。その最たる存在が、シニアなんです。

    宇垣さん:そうやって考えると、シニアの方も、何らかの業界で長く経験を積んできた方が多いということですよね。

    中島さん:おっしゃる通りです。長年培ってきた経験に、AIによる実行力を掛け合わせる。そこにこそ、これからの時代に求められる「人の価値」があると思っています。

    「インテリジェンスを超える会社を作らないか」。共同創業者・藤澤氏とのパートナーシップ

    宇垣さん:共同創業者の藤澤さんについても伺います。藤澤さんとの共同創業を決めた理由は、どこにあるのでしょうか?

    中島さん:SilverXの代表は僕ですが、最初に「一緒に会社をやらないか」と誘ってくれたのは藤澤なんです。
    当時、VOLLECTはエン・ジャパンのグループ会社となっており、僕は子会社の社長としてVOLLECTを続けるか、辞めるかをまだ決めていない段階でした。
    そんなとき、彼から急に彼から「インテリジェンスを超える会社を作らないか」と言われたんです。その一言が自分としてはぶっ刺さって、「それはおもろそうだな」と思ったのが始まりですね。

    宇垣さん:お2人は異なるスキルをお持ちとのことですが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

    中島さん:テクノロジー領域と採用領域というスキルセットに加えて、思考のタイプも異なります。
    もともと2人ともインテリジェンス出身ですが、藤澤はその後、業務の自動化を担う人材を企業へ派遣するPeaceful Morning株式会社を起業し、クラウドワークスとのM&Aを経験しました。彼はテクノロジー領域に強く、僕はダイレクトリクルーティングをはじめとする採用領域に携わってきたので、「AI×人材」という領域で相性がよかったんです。
    さらに、僕はWhy型の人間で、彼はどちらかというとHow型の人間です。

    宇垣さん:つまり、どういうことでしょう?

    中島さん:Why型の僕は、「なぜこれをやるのか」「なぜやる必要があるのか」を考えます。一方、彼は「どうやって実現するのか」を考えるタイプです。
    WhyとHowの両方を1人で担えればよいのですが、どちらかに寄るケースも多いと思います。お互いに社長を経験してきたものの、仕事の進め方はかなり違うので、一緒にやっていてすごく面白いですね。

    宇垣さん:なるほど。目的から考えるタイプと、実現する方法を考えるタイプなのですね。
    また、藤澤さんは取締役CAIOに就任されていますが、「CAIO」という役職は初めて聞きました。どのような役割なのでしょうか。

    中島さん:CAIOは、AIのトップ責任者を担う役職です。CEOやCFOなどと同じCXOの1つで、現在、日本には100人ぐらいしかいないと言われています。

    宇垣さん:日本でも100人はいるのですね。

    中島さん:ええ。彼自身もAIを勉強中ですが、おそらく現状のCAIOは全員が学び続けているのだと思います。
    AIを活用して会社自体を最適化・効率化するのはもちろん、登壇などを通じてCAIOの観点から発信することも、僕たちの事業に繋がると考えています。そうした意図から、この肩書きにしました。

    宇垣さん:お2人がそれぞれ異なる会社を経営してきたからこそ、今のSilverXが生まれたのだと、お話を伺っていて感じました。どちらか1人だけでは、成立しなかったのかもしれませんね。

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